環境省は、絶滅の恐れのある野生生物の生殖細胞などを冷凍保存する「環境タイムカプセル」事業を2002年度から始める。将来、科学技術が発展したときに、研究・分析の対象として利用しようという試みで、試料をデータベース化し外部の研究者にも公開する。
保存対象は、ツシマヤマネコやシマフクロウなど絶滅危惧(きぐ)生物の生殖細胞や遺伝子などの生物試料と、土壌や大気中の粉じん、ヒトの毛髪や尿などの環境試料の2種類。
国立環境研究所(茨城県つくば市)に専用の保存棟を設け、当面、生物試料100種類と、毎年の環境試料を順次保存していく。環境試料は約30年分の保存スペースがある。試料はいずれも氷点下約196度の液体窒素で冷凍する。細胞や有機化合物も変質せず、約100年間保存できるという。
以前は知られていなかった環境ホルモン(内分泌かく乱物質)が社会問題化したように、将来、科学の発展で新たな環境問題が判明した場合、過去の試料を使って、有害物質が生体内や環境中にどの程度含まれているか調べられる。同研究所の彼谷邦光・環境研究基盤技術ラボラトリー長は「技術が開発されれば、野生生物などの生体の復元に利用することもできる」と話している。
毎日新聞 2002.1/1(火)